【4】障害厚生年金の併給調整-①

2年前の事故で右腕を失い、2級の障害厚生年金を受けながら会社勤めを続けていましたが、再び事故にあい、今度は左腕が麻痺して使えなくなりました。受給していた障害厚生年金のほかに、新たな障害厚生年金は支給されますか。

障害厚生年金(障害等級の1級または2級に該当するもの)を受給しながら会社勤めをしている人が、他の傷病が原因で新たな障害の状態になった場合、その障害についても障害厚生年金(障害等級の1級または2級に該当するもの)が受けられるようなケースも生じます。厚生年金保険では、同一の者が2つ以上の年金給付を受ける権利を取得したときは、原則としてその者の選択により、いずれか1つを支給し、他のものは支給停止することになっています。しかし、被保険者期間中に前後して障害を受けたとき、たとえば、はじめに右腕を失い、後に左腕を失ったとき、全体として見れば、両上肢を失ったことになり、1級相当の障害状態にあるのに、それぞれの障害について別々に2級の障害認定をし、前述のように、その者の選択により一方のみを支給するのでは不合理であるということから、次のような措置が講じられています。すなわち、前後の障害を併合した障害状態に相当する等級の障害厚生年金を支給する必要があるので、後に発生した障害の障害認定日に、前後の障害を併せて障害の状態を認定(このような場合の認定を「併合(加重)認定」といいます。認定の基準については、92頁の併合認定を参照)し、以後、新たな等級の障害厚生年金を支給することになっています。他方、それまで支給されていた障害厚生年金を受ける権利は消滅します。したがって、ご質問のケースでは、左腕の麻痺による障害の程度が2級に該当した場合、現在支給されている2級の障害厚生年金の原因となった右腕の喪失という障害と、左腕の麻痺という障害を併せて障害の程度を認定し、「両上肢の用を全く廃したもの」として1級の障害厚生年金と障害基礎年金が支給されます。また、障害厚生年金の年金額は、障害認定日の属する月までの被保険者期間を基礎として計算されますので、新たに支給される障害厚生年金の年金額は、2級の障害厚生年金を受給しながら会社勤めをしていた期間も含めて再計算されます。

*日本年金機構で併合後の1級の年金の裁定および前発障害の年金の失権処理が行われます。(障害給付Q&Aより)