札幌障害年金相談センターで「障害年金」のサポートをさせて頂く中で、医学用語を掲載するようにしています。皆さまの少しでもお役に立てれば幸甚です。

広汎性発達障害とは

「広汎性発達障害」は、生まれつきの脳の微細な異常が原因と考えられている神経発達障害の一種です。コミュニケーション能力が弱く、独自のこだわりに強くとらわれるために社会生活が困難になりやすい特徴を持ちます。以前は、自閉症やアスペルガー症候群と呼ばれていた障害がこれに含まれます。

かつては、「広汎性発達障害」には症状によって細かな分類があり、自閉症、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性障害、レット障害の5つに区分されていました。ですが、2013年に改訂されたアメリカ精神医学界の診断基準DSM-5では、レット障害を除く4つ(自閉症、アスペルガー症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性障害)が「自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害)」として1つに統合されました。

そのため、以前は自閉症やアスペルガー症候群と診断されていた人も、現在の診断基準に照らし合わせると自閉症スペクトラム障害として診断がつきます。広汎性発達障害に含まれていた障害のほとんどが自閉スペクトラム障害として統合されたため、現在は「広汎性発達障害」と自閉スペクトラム障害がほぼ同じ意味で使われています。

スペクトラムとは、「連続体」の意味です。アスペルガー症候群や自閉症では知能の発達などの違いがあるものの、「コミュニケーションの困難さ」と「強いこだわりによる社会適応の困難さ」の二つの大きな特徴は同じです。ですのでそれらは別の障害ではなく、連続した自閉障害の中での程度の差だという考え方になりました。

アスペルガー症候群では知能の遅れは見られませんが、自閉症では多くの場合に知的障害もともないます。ですがそこの境目があいまいな患者さんも多く、線引きが難しいために、「自閉スペクトラム障害」として1つに統合した診断が行われるようになりました。

とはいえ、自閉症やアスペルガー症候群の名前の方が自閉スペクトラム障害よりも一般的な認知度は高く、そちらの障害名がそのまま通用されている場合もあります。

広汎性発達障害の中で1つ独立しているレット障害は、ほとんど女の子にしか見られない進行性の神経疾患です。いったん習得した言語や運動の能力が徐々に退行する障害で、日本では難病指定を受けており、自閉スペクトラム障害とは一線を画した特殊な疾患として扱われています。

広範性発達性障害の診断および治療には、複雑心理検査(WAISなどの知能検査)が必要になることが多いです。当院では複雑心理検査が実施ができず、専門的な検査およびそれに基づいた治療を希望される場合は、十分な診療を行うことができません。発達障害を専門に診療されている医療機関にご受診ください。

広汎性発達障害の症状

広汎性発達障害の主な症状は、

  • コミュニケーション能力の障害による社会性の低下
  • 独自のこだわりによる社会適応の困難

の2つに大別されます。

細かくは、

  • 相手と適度な距離をはかれない
  • 場の空気や相手の感情を察知できない
  • 曖昧なニュアンスが理解できない
  • 想像力が弱い
  • 客観的な視点で自分や周囲をとらえるのが苦手
  • 柔軟に視点を変えるのが難しい
  • 決まったやり方や習慣に強くこだわる
  • 関心や興味が極度に偏っている
  • 同じ動作に没頭する
  • 感覚に敏感または異常に鈍感
  • 不器用、運動神経が鈍い

などの症状があります。

コミュニケーション能力の障害による社会性の低下

広汎性発達障害で一番問題になるのは、コミュニケーションの難しさです。相手がどのように思うかということを自然に想像することができないために、コミュニケーションにずれが出てしまいます。そのため対人関係が上手くいかず、学校や職場で孤立してしまいます。

何がずれているのかの理解もできないために、社会性が身につきません。いわゆる常識的なふるまいが自然にできなくなってしまいます。

広汎性発達障害(自閉症スペクトラム障害)では、症状の程度に個人差がとても大きいのが特徴です。家族とのコミュニケーションもままならず社会生活が非常に困難な方から、表面上はごく普通に社会生活を行っている方まで様々な状態が見られます。

このように症状の程度によっても、困難のあらわれ方が異なります。軽度と重度にわけてみていきましょう。

軽度でよく見られる症状

軽度の人では言葉の理解は正常ですが、言葉以外の表情や仕草などを使ったコミュニケーションが苦手で、言葉以外から相手の意図や感情を読み取ることが困難です。場の空気を察知して適当な言動を選ぶこともできません。

具体的には、

  • 対話するときの相手との距離が近すぎる
  • 人と接するときに目が泳ぐ、視線が不自然になる
  • その場の雰囲気に合わない表情をする

などの状態が見られます。

これらにより、相手に不信感や不自然な印象を与えてしまい、対人関係が困難になってしまうことが多いのです。

また、

  • アイコンタクトや表情によって相手と気持ちを通じ合わせることができない
  • 相手の言葉に含まれた裏の意味が通じない
  • 相手の立場になって物事を考えたり発言を選んだりできない

などの特徴もよく見られます。

軽度の患者さんでは言語能力や理解力はごく正常で、言葉を意味通りに理解することは問題なく行えます。ですが、言葉以外の仕草や表情といった非言語コミュニケーションがとても苦手です。アイコンタクトや表情によって意志疎通をはかることができません。

言葉も裏の意味が読めず、すべてを言葉通りに受け取ってしまうこともあります。そのため、社交辞令や冗談や遠回しの表現が通用せず、相手は軽い冗談や嫌味で言ったつもりのことを真に受けてしまいます。それに加え、相手の立場や感情に配慮しながら言葉を選ぶことも困難で、対人トラブルがおこる原因になります。

また、

  • 人から言われたことに何でも従う
  • 嫌なことや無理なこともすべて受け入れてしまう

などで、適度な対人関係が築けない場合もあります。

とくに大人の世界では、言葉というのは建前で、実際に伝えたいことは表情や態度に表すことが少なくありません。社交辞令、冗談、皮肉、言葉通りに受け取れない言葉が日常的に飛び交っています。一般の人は、それらを適当に選別しながら対応しますが、広汎性発達障害の方にとってはそれが非常に困難で、日常のコミュニケーションがとてもハードルが高いものになってしまうのです。

広汎性発達障害の患者さんは言葉をストレートにしか受け取れず、周囲からすると「空気の読めない人」「気くばりのできない人」と思われたり、反対に悪意があってわざと相手の意図を無視したり、ストレートな物言いをしたりしているように誤解されることもあります。その態度が自分勝手とか横柄だと受け取られてしまうこともあります。

ですが、患者さん本人には全く悪意はなく、性格としてはむしろ優しく素直な方が多いのです。自己中心的なわがままさで空気を読まない言動を行っているわけではなく、そういう能力が未発達なだけです。人の言葉に限らず、物事を広い視野で客観的に見たり、想像力を働かしたりするのがとても苦手です。

そのため、患者さん自身はなぜ相手が怒ったのか、なぜ周囲から避けられてしまうのかが理解できず、深く傷つき悩んでいる方も多いです。周囲の方からみても明らかに病的にはみえないので、本人の性格などと捉えてしまって溝が深まってしまうことが少なくありません。

広汎性発達障害の方は「人に気を遣わない」のではなく、「気を遣おうと努力しても上手くできない」のです。患者さん自身は人と仲良くしたいと一生懸命努力しても、それが伝わりません。自分の意志で相手に気を遣わないことを選択している人とは異なり、「そうしたい」と願ってもできないことが多いため、患者さん自身も苦しむことになるのです。

重度でよく見られる症状

一方、重度の患者さんで障害の程度が強くなると、以下のような症状がよく見られます。

  • 人に関心を示さない
  • 呼びかけに反応しない
  • 目を合わせない
  • 一方的に話して会話が成り立たない
  • 同じ言葉をくり返す

などです。ボキャブラリーの乏しさや理解力の欠如など、言語能力の方にも遅れが見られます。

このように程度が重いと、周囲も病気という認識を持ちます。本人の特性を周囲が配慮することで、得意な部分が大きく発揮されることもあります。

独自のこだわりによる社会適応の困難

広汎性発達障害の症状でのもう1つの大きな特徴は、

  • 独自のこだわりが強すぎること

です。例えば、

  • 決まったやり方や道筋などに強くこだわる
  • 習慣を変えるとパニックになる
  • 臨機応変に動くことが難しい
  • 興味や関心が極端に偏っている

などです。

それから、様々な感覚に敏感なことも多く、

  • 肌触りにこだわり着られるものが限られる
  • 同じ物しか食べようとしない
  • 音に敏感でささいな音を嫌がる

などの状態が見られる人もいます。反対に、痛みや熱などの刺激に対して妙に鈍く、反応を示さないこともあります。

また、

  • 運動神経が鈍い
  • 異常に不器用

などの処理能力が低いという特徴を持つ方もいらっしゃいます。

広汎性発達障害の方は、パターン化されたことなら問題なくこなせる人が多いですが、急に予定や道筋が変更になったり、場所や道具が変わったりなどのシーンで臨機応変に動くことがとても苦手です。そのため、急な変更の多い仕事ではパニックになってしまい、支障が及びます。

また、興味や関心が極端に偏っていることがあり、ある特定の分野にだけ異常に没頭し、他には全く目を向けないこともあります。

これにはいい面もあり、得意分野に関しては並み以上の暗記力や探求力を発揮し、天才的な能力が開くことがあります。過去の偉大な研究者や芸術家の中にも、広汎性発達障害だったと考えられている人たちがいて、障害というより一種の特殊な能力と見ることもできます。サヴァン症候群として、最近はドラマなどのネタにもなっていますね。

そこまでいかなかったとしても、一般の人が嫌がる非常に地道なくり返し作業にハマると実にコツコツとこなすので、上手く特性が仕事に結びつく場合もあります。ですが、一般社会の生活においてはその強いこだわりが障害となってしまうことも多いのです。こだわりが強いということは、その場に合わせた柔軟な対応が難しいということです。これが対人関係や仕事上で問題になることが多いです。

上手く自分の興味や特性とマッチングした職業につければ良いのですが、それはなかなか難しいことです。一般社会で生活するために、自分の関心事以外にも最低限目を向け対応ができるようにしていく工夫が求められることになります。

広汎性発達障害の症状は、どれも「無理に治さなければいけないもの」ではありません。とくに軽度の人は、そのような傾向があっても困らず生活や仕事をしているのなら、問題はないです。ただ、それが支障になって対人関係が上手くいかず、患者さん本人が苦しんでいたり、仕事の妨げとなって経済的な困難を抱えたりしてしまうようなら治療の対象になります。

引用元:広汎性発達障害(自閉症スペクトラム障害)の症状・診断・治療について

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